受託開発と自社開発どっちがいい?エンジニアの判断軸を整理
受託と自社開発、結局どっちがいいのか問題
SESや受託から転職を考え始めると、必ずぶつかるのがこの問題。「自社開発がいい」とよく言われるけど、本当にそうなのか。受託開発にも良いところはあるんじゃないか。ネットで調べても「自社開発最高!」という記事ばかりで、冷静な比較がなかなか見つからない。
この記事では、受託開発と自社開発それぞれの特徴を「年収」「スキル」「働き方」の3軸で比較する。どちらが上とか下ではなく、自分にとってどちらが合っているかを判断するための材料を整理した。
受託開発と自社開発、そもそも何が違うのか
まず前提を揃えておく。受託開発はクライアントから依頼を受けてシステムを作る仕事。自社開発は自社のプロダクトを企画・開発・運用する仕事。ここまでは多くの人が知っている。
根本的に違うのは「誰のために作るか」と「作った後どうなるか」の2点。受託開発は納品がゴール。クライアントの要件を満たしたらプロジェクトは終わる。次はまた別のクライアント、別の案件。一方、自社開発はリリースがスタート。同じプロダクトを何年もかけて改善し続ける。
この違いが、年収の構造にもスキルの身につき方にも、日々の働き方にも影響してくる。
年収で比較する:構造の違いを知っておく
年収は多くのエンジニアが気にするポイントだと思う。ただ「自社開発のほうが高い」と一概には言えない。
受託開発の会社は、クライアントから受け取る開発費が売上の上限になる。エンジニア1人あたりの単価が月80万〜120万として、そこから営業コストやオフィス費用を引いた残りが給与の原資。構造的に、一人あたりに払える額に天井がある。
自社開発の場合、プロダクトが成長すれば売上は青天井。ユーザー数が10倍になってもエンジニアの数を10倍にする必要はない。だから利益率が高くなりやすく、その分エンジニアの給与にも反映されやすい。成長しているSaaS企業なら、同じ経験年数でも受託より50万〜100万高いケースは珍しくない。
ただし、自社開発でもプロダクトが伸びていなければ話は変わる。赤字のスタートアップで「自社開発だから高年収」とは限らない。逆に、大手SIerのプライム案件を持っている受託企業なら、年収600万〜700万は十分ありえる。
見るべきは「受託か自社開発か」ではなく、その会社のビジネスモデルと利益構造。事業が儲かっていれば給与は上がるし、儲かっていなければどちらでも上がらない。
スキルで比較する:広く浅くか、深く長くか
受託開発の強みは、さまざまな業界・技術に触れられること。半年ごとに違うプロジェクトに入れば、Javaも書くしTypeScriptも書く。金融の業務知識もECの知識もつく。技術の幅を広げたいなら、受託のほうが効率がいい場面もある。
ただし、1つのプロジェクトに深く関わる機会は少なくなりがち。納品したら終わりなので、自分が書いたコードが半年後にどうなったか、ユーザーにどう使われているかを見届けることがない。設計判断の結果を長期で検証する経験が積みにくい。
自社開発では逆のことが起きる。技術スタックは固定されがちで、Railsの会社ならずっとRails。でも同じプロダクトに向き合い続けるから、アーキテクチャの変遷を体験できる。初期の設計判断が1年後に技術的負債になる過程を見て、それをどうリファクタリングするかを考える。これは受託ではなかなか得られない経験。
もう一つ大きいのが、プロダクト思考が身につくかどうか。自社開発では「この機能は本当にユーザーに必要か」を日常的に議論する。PdMやデザイナーと一緒に仮説を立てて、リリースして、数字を見て判断する。エンジニアとしての市場価値を高めたいなら、この経験は大きな差別化要因になる。
働き方で比較する:裁量とプレッシャーのトレードオフ
受託開発の働き方は、案件のフェーズに大きく左右される。要件定義が固まるまではゆるいけど、納期前は一気にきつくなる。クライアントの都合で仕様が二転三転することもある。ただ、プロジェクトが終われば次は別の現場。合わない環境でも期限つきだと割り切れる面はある。
自社開発は、自分たちでスケジュールをコントロールしやすい。外部の納期に縛られないから、「ここは技術的負債を先に返済しよう」といった判断もできる。リモートワークやフレックスの導入率も、自社開発のほうが高い傾向にある。
一方で、プロダクトの数字に対する責任感は重くなる。リリースした機能がKPIに響かなかったとき、それは外部のクライアントのせいにはできない。自分たちの判断の結果として向き合う必要がある。この緊張感が合う人には最高の環境だけど、合わない人にはじわじわ効いてくる。
残業時間に関しては、受託も自社開発もピンキリ。「自社開発=ホワイト」は幻想で、成長フェーズのスタートアップはかなりハードなこともある。OpenWorkなどの口コミサイトで個社ごとに確認するほうが確実。
判断軸の整理:自分がどうなりたいかで決める
ここまでの比較をまとめると、受託開発と自社開発の選択は「今の自分が何を優先するか」で変わる。
技術の幅を広げる段階なら、受託開発で複数のプロジェクトを経験するのも悪くない。特にエンジニア歴が浅いうちは、いろんな設計パターンや技術に触れることで引き出しが増える。
一方、「1つのプロダクトに深く関わりたい」「ユーザーに届く仕事がしたい」「プロダクト全体を見渡せるエンジニアになりたい」と思うなら、自社開発のほうが近道。年収面でも、成長企業の自社開発は構造的に有利な場合が多い。
よくある失敗パターンは「なんとなく自社開発のほうが良さそう」で選ぶこと。自社開発に転職したのに、蓋を開けたら保守ばかりで新規開発がない。あるいはプロダクトが撤退寸前で、受託の下請けに逆戻り。「自社開発」というラベルだけで判断すると、こういう落とし穴にはまる。
会社を選ぶときは、事業が成長しているか、エンジニアに裁量があるか、技術的な意思決定がどこで行われているかを具体的に確認すること。面接で「直近半年で一番大きかった技術的な意思決定は何ですか」と聞いてみるだけでも、かなりのことがわかる。
まとめ
受託開発と自社開発は、どちらが上でも下でもない。年収は会社のビジネスモデル次第、スキルは深さと幅のどちらを優先するか次第、働き方は個社ごとに違う。「自社開発=正解」ではなく、自分のキャリアの方向性に合うほうを選ぶのが正解。
判断に迷ったら、「3年後にどんなエンジニアになっていたいか」を基準にするといい。その理想像に近い環境がどちらかを考えれば、答えはそこまで難しくない。
SESや受託から自社開発への転職を具体的に考えている方は、SESから自社開発に転職する方法で全体の進め方をまとめているので、あわせて読んでみてください。