SIerとWeb系の違いを4軸で比較|転職前に知りたい判断基準
SIerからWeb系への転職を考えているけど、実際に何がどう違うのかがよくわからない。ネットで調べると「Web系のほうがモダンで自由」みたいな情報ばかり出てくるけど、本当にそうなのか。SIerにいること自体がダメなのか。そんなふうにモヤモヤしている人は多いと思う。
結論から言うと、SIerとWeb系に「どちらが上」という関係はない。開発の進め方、キャリアの伸ばし方、報酬の仕組み、働き方のスタイルがそれぞれ違うだけで、自分に合う環境を選べるかどうかが重要になる。
この記事では、SIerとWeb系の違いを4つの軸で整理する。転職するかどうかの判断材料として使ってほしい。
開発スタイルの違い|ウォーターフォールとアジャイルだけでは語れない
SIerといえばウォーターフォール、Web系といえばアジャイル。よく見かける対比だけど、これだけでは実態を捉えきれない。
SIerの開発は、受託という構造に大きく影響されている。クライアントの要件を固め、設計書を作り、実装し、テストして納品する。フェーズごとに成果物が定義されていて、手戻りが起きにくいように上流工程に時間をかける。大規模な基幹システムやインフラ案件では、この進め方が合理的だし、実際にうまく回っている現場も多い。
一方、Web系の自社開発では、プロダクトの仮説を素早く検証することが求められる。1〜2週間のスプリントで機能をリリースし、ユーザーの反応を見て方向修正するのが基本。設計書を何十ページも書くより、動くものを早く出してフィードバックを得ることが優先される。
ここで注意したいのは、SIerでもアジャイルを取り入れている現場はあるし、Web系でもドキュメント重視のチームは存在するということ。違いの本質は開発手法そのものより「誰のために作っているか」にある。クライアントのために作るのか、自社のユーザーのために作るのか。この構造の違いが、日々の意思決定のスピード感や裁量の幅に影響してくる。
キャリアパスの違い|マネジメント一択か、技術で伸ばせるか
SIerのキャリアパスは、わりとわかりやすい一本道になっていることが多い。プログラマーからSE、SEからPL、PLからPMへとステップアップしていく。上流工程に行くほど評価が上がる構造なので、30代以降はコードを書く機会がどんどん減っていく傾向がある。
大手SIerでは入社3〜5年でPLを任され、10年もするとプロジェクト全体の管理がメインになる。技術が好きでエンジニアになったのに、気がつけばExcelで進捗を管理する日々、というのはSIerあるあるだろう。
Web系では、マネジメントに進むルートと、テックリードやスペシャリストとして技術を深めるルートが並立していることが多い。たとえばメルカリやサイバーエージェントのような企業では、IC(Individual Contributor)としてコードを書き続けながら上位グレードに進める制度が整備されている。
ただし、Web系でも規模が大きくなればマネジメント人材の需要は高まるし、小さなスタートアップでは制度が未整備なまま「なんでもやる」状態になることもある。Web系に行けば自動的に技術を極められるわけではなく、自分のキャリアを自分で設計する意識が必要になる。
年収の違い|初年度はSIer、伸びしろはWeb系
年収の比較は一概に語りにくいが、傾向はある。
大手SIer(NTTデータ、富士通、NEC等)の場合、新卒初年度で350〜400万円、30代で600〜700万円、管理職になれば800万円以上というレンジが一般的だ。年功的な要素が強く、安定して上がっていく代わりに、若手のうちに大きく跳ねることは難しい。
Web系は企業の規模とフェーズによって振れ幅が大きい。メガベンチャー(LINE、楽天、DeNA等)なら大手SIerと同等かそれ以上の水準になるが、シード期のスタートアップでは400万円台ということも普通にある。その代わり、実力次第で20代のうちに700〜800万円に到達する人もいる。技術力と成果が報酬に直結しやすい構造だからだ。
もう一つ見落としがちなのが「転職による年収アップのしやすさ」。Web系のエンジニアは技術スタックがポータブルで、転職市場での流動性が高い。2〜3年ごとに転職して年収を上げていくキャリア戦略が成立しやすい環境にある。SIerの場合、業務知識や社内プロセスへの習熟が評価の軸になりやすく、転職時にそのスキルが別の会社で同じように評価されるとは限らない。
働き方の違い|安定のSIer、裁量のWeb系
SIerの働き方は、プロジェクトの納期に大きく左右される。納品前は残業が増え、プロジェクトの谷間には比較的余裕がある。客先常駐の場合は勤務地や勤務時間がクライアントに依存するため、自分でコントロールできる部分が少なくなる。一方で、大手SIerは福利厚生が手厚く、有給取得率も高い傾向にある。長期的な安定を重視するなら、この環境は悪くない。
Web系は、リモートワークやフレックスの導入率が高い。2024年時点で、Web系企業の約7割がリモートワークを何らかの形で継続しているというデータもある。服装や勤務時間の自由度も高く、働き方の裁量が大きい。
ただし、裁量が大きいということは自己管理が求められるということでもある。誰かに指示されなくても成果を出し続ける必要があるし、サービスに障害が起きれば深夜でも対応することがある。「自由」と「放任」は紙一重で、主体的に動けない人にとってはWeb系の環境がかえってストレスになることもある。
「向いている環境」を選ぶための判断軸
ここまでの比較を踏まえて、自分がどちらに向いているかを考えるための判断軸を整理しておく。
SIerが向いているのは、大規模なシステムに関わりたい人、上流工程やマネジメントに興味がある人、安定した昇給と福利厚生を重視する人だ。金融や官公庁のシステムなど、社会インフラを支える仕事にやりがいを感じるなら、SIerのほうが圧倒的にチャンスが多い。
Web系が向いているのは、技術を深め続けたい人、プロダクトの企画から関わりたい人、自分の裁量で働き方をコントロールしたい人。ユーザーに直接価値を届ける実感を得たいなら、Web系のほうがその機会は多い。
注意してほしいのは、「SIerがつらいからWeb系に行く」という消去法だけで転職すると、Web系でも同じ不満を抱える可能性があるということ。SIerの何が合わないのかを具体的に言語化して、それがWeb系で本当に解消されるのかを確認してから動いたほうがいい。
まとめ
SIerとWeb系の違いは「優劣」ではなく「構造の違い」。開発スタイル、キャリアパス、年収の伸び方、働き方のどこに自分の優先順位があるかで、最適な環境は変わる。
大事なのは、ネット上のイメージだけで判断しないこと。SIerにも良い現場はあるし、Web系にも厳しい現場はある。自分の価値観と照らし合わせて、納得できる選択をしてほしい。
SIerやSESから自社開発への転職を具体的に考えている人は、SESから自社開発に転職する方法も参考にしてみてください。また、SESと自社開発の違いを比較したSES・客先常駐と自社開発の働き方比較もあわせて読むと、判断の解像度が上がると思います。