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副業OKの企業に転職したいエンジニアが知るべきこと

「次の転職先では副業できる会社がいい」。そう考えるエンジニアが増えている。収入の複線化、スキルの幅出し、将来の独立準備。理由はさまざまだが、副業OKかどうかを転職の条件に入れる人は確実に多くなった。ただし「副業OK」の中身は企業によってかなり違う。この記事では、副業OKの企業を見極める方法と、副業がキャリアにもたらす効果、そして見落としがちな注意点を整理する。

副業OKの企業が増えた背景

副業解禁の流れは2018年に大きく動いた。厚生労働省が「モデル就業規則」を改定し、それまで原則禁止だった副業・兼業の記述を「原則容認」に変えたのがきっかけだ。これを受けてサイボウズやYahoo!(現LINEヤフー)など大手IT企業が副業を公式に認め始め、業界全体に波及していった。

さらにコロナ禍がこの流れを加速させた。リモートワークが定着したことで、通勤時間がなくなった分を副業に充てるエンジニアが増えた。企業側も、優秀なエンジニアの採用競争が激化する中で「副業OK」を打ち出すことが採用上の差別化になると気づき始めた。

パーソル総合研究所の調査(2023年)によると、副業を認めている企業は全体の約6割。IT・Web業界に限ればその割合はさらに高い。もはや副業禁止の会社のほうが、エンジニア採用で不利になる時代に入りつつある。

「副業OK」の企業を見分けるポイント

求人票に「副業OK」と書いてあっても、実態は会社によって大きく異なる。転職前に確認すべきポイントがいくつかある。

まず就業規則の記載内容だ。「届出制」なのか「許可制」なのかで自由度がまったく違う。届出制は申請すれば基本的にOK。許可制は上長の承認が必要で、案件の内容次第では却下されることもある。面接や内定後の条件確認の段階で「副業の申請フローはどうなっていますか」と具体的に聞くのがいい。「副業OKです」の一言だけで済ませず、運用の実態を確認しておかないと、入社後に「OKとは言ったけど競合はダメ、土日のみ、事前承認に2週間」のような制約に直面することがある。

次に、競業避止の範囲だ。多くの企業は「本業と競合する事業への関与」を禁止している。これ自体は合理的だが、IT企業の場合「競合」の定義が曖昧になりがちだ。たとえばBtoB SaaSの会社に勤めているエンジニアが、別のBtoB SaaSの開発を副業で受けたらアウトなのか。この線引きは会社ごとに違うから、具体的なケースを想定して確認しておくべきだ。

もう一つ見るべきなのは、社内に副業をしている人が実際にどれくらいいるかだ。制度としてはOKでも、実際に使っている人がほとんどいないなら、暗黙の空気として副業しづらい可能性がある。面接で「エンジニアの中で副業している方はどのくらいいますか」と聞いてみると、その会社の温度感がわかる。カジュアル面談や口コミサイトも参考になる。

副業エンジニアの収入レンジはどのくらいか

副業の収入は案件の種類と稼働時間によって幅があるが、エンジニアの副業は他職種と比べて単価が高い傾向にある。

業務委託で開発案件を受ける場合、時給換算で3,000〜5,000円が一つの目安になる。週に10時間ほど稼働するとして、月12万〜20万円程度の収入になる計算だ。スキルや経験によってはもっと高い案件もあるが、最初から高単価を狙うより、まずは無理なく回せる稼働量で始めて実績を作るほうが現実的だ。

案件の種類としては、スタートアップの開発支援、既存サービスの機能追加、コードレビューや技術顧問的な関わり方などがある。コードを書く案件だけでなく、設計レビューや技術選定のアドバイザリーなど、経験を活かした上流寄りの関わり方もエンジニア副業の選択肢として広がっている。

副業マッチングのプラットフォームとしては、Offers、クラウドテック、YOUTRUST、Workshipなどがある。案件の探し方としては、これらのサービスに登録してスカウトを待つか、エンジニアコミュニティやSNS経由で声がかかるパターンが多い。知人からの紹介で始める人も少なくない。

副業経験が本業の転職にもたらすメリット

副業の恩恵は収入だけではない。むしろ本業のキャリアに対して効いてくる部分のほうが大きいかもしれない。

一つ目は、スキルの可視化だ。本業では社内の文脈で仕事をしているから、自分のスキルが外の世界でどう評価されるかが見えにくい。副業で別の会社のコードベースに入ると、自分の技術力がどの程度通用するかを肌で感じられる。「本業では当たり前にやっていたことが、副業先ではすごく感謝された」という経験が、転職時の自己PRの具体的なエピソードになる。

二つ目は、市場価値の把握だ。副業で提示される単価は、自分の時間に対して市場がつけた値段そのものだ。時給4,000円で副業しているなら、フルタイム換算で年収750万円相当のスキルがあるという一つの目安になる。今の本業の年収がそれより大幅に低いなら、転職で年収を上げられる可能性が高い。

三つ目は、異なる技術スタックや開発文化に触れられることだ。本業がRailsなら副業でGoを触ってみる、本業がモノリスなら副業でマイクロサービスに関わる。こうした経験は転職時の選択肢を広げてくれる。面接で「副業で別のアーキテクチャを経験しています」と言えるのは、明確なアドバンテージになる。

副業エンジニアが見落としがちな注意点

副業のメリットばかりに目が行きがちだが、始める前に押さえておくべきリスクもある。

最も見落とされやすいのが確定申告だ。副業の年間所得が20万円を超えると、確定申告が必要になる。会社員として年末調整を受けていても、副業分は自分で申告しなければならない。これを怠ると後から追徴課税が発生する。開業届を出して青色申告にすれば控除額が大きくなるが、経費の帳簿付けなど手間も増える。副業を始める前に、freeeやマネーフォワードなどの会計ソフトを触っておくと後が楽だ。

次に、本業との時間の切り分けだ。副業が面白くなってくると、つい稼働時間を増やしてしまう。その結果、本業のパフォーマンスが落ちて評価が下がる、体調を崩す、というパターンは珍しくない。週の副業時間をあらかじめ決めて、そこを超えない運用をするのが長続きのコツだ。月40時間を超えるあたりから、身体的にも精神的にもきつくなるという声が多い。

それから、機密情報の取り扱いにも注意が必要だ。本業で得た技術的なノウハウや内部情報を副業に流用するのは、契約違反になりうる。特にインフラ構成やセキュリティに関する知識は、意図せず持ち出してしまいやすい。「知っていることを使うな」というのは難しい話だが、本業固有の情報と一般的な技術知識の線引きは意識しておくべきだ。

まとめ

副業OKの企業は増えているが、「OK」の中身は会社によって大きく異なる。就業規則の運用実態や競業避止の範囲を転職前に確認しておくことが重要だ。

副業エンジニアの収入は月10万〜20万円がボリュームゾーンで、本業の年収とは別のキャッシュフローを作れる。それ以上に、スキルの可視化や市場価値の把握といったキャリア面のメリットが大きい。

確定申告、稼働時間の管理、機密情報の取り扱いなど注意点もあるが、事前に把握しておけば対処できるものばかりだ。副業を前提に次の転職先を探すなら、制度だけでなく「実際に副業している人がいるかどうか」を確認するところから始めるといい。